FLOWERS AND VESSELS | with floral artist Kentaro SUGI
2024年7月5日(金)- 8月5日(月)*会期延長
夏至。地球を回る太陽の高度が最も高くなり、一年のうちで最も日が長くなるこの時期、京都の町は高揚と祈りに包まれます。7月1日から約1ヶ月半ものあいだ、精霊たちが舞い戻ってくるのです。京都の大祭、疫病退散の祈願である御霊会の「祇園祭」は、厳粛な氏子によって千百年もの時を絶えることなく、連綿と受け継がれています。一方、京都人みなが祈る儀式のひとつに「送り火」があります。8月13日から16日に舞い戻ってくると言われる先祖の精霊たちを、再び黄泉国へ送るための儀式として、16日の夜に京都の町を取り囲む五つの山に松明を灯し、その炎に手を合わせて見送るのです。
文字を持たない古代の時代から、人々はみな祈りを分かち合うことで結束を固め、赦しと安らぎを求めてきました。儀式のなかで用いられる水、炎、花、舞、太鼓や鈴などの楽器の音、神輿や豪奢な調度品は、心を合わせるための可視化された装置であり、再生のエネルギー、そのシンボルでもあります。
この時季にあわせ、「花と容れもの」展を開催します。なぜ人は花を手折り、それを愛でるのでしょうか。花の姿に何かを求める源泉、そして美醜を分つ心は特別なものでしょうか。花が咲いている、その歓びはどこから来るのでしょうか。本展示では、花を生けることに改めてフォーカスします。花を受け止める器という視点で、花器はもちろんのこと、かご、ザル、盆など、時代、作家を交えて、さまざまご紹介いたします。
また、この展示会にあわせて花人の杉謙太郎さんをお迎えし、花会を催します。30年以上にわたって花に従事してきた杉さんは、ご自身の花会を「生の会」と称します。
杉さんが日日で見せてくださる花、その姿を手がかりとして、花と容れもの、花と暮らし、そして花と心を、皆さんとともに学び味わいたいと思います。
【杉 謙太郎|Kentaro SUGI】
1975年 福岡生まれ。18歳より花の道へ、原田耕三に師事。古典花道という領域の「いけばな」を学び、独自の表現を追求し続けている。旧式の「いけばな」ではなく、様々な視点と角度から作品を生み出す姿勢が、生花に新しい時代の息吹を注ぎ込む。杉謙太郎の花会とは、約1時間半から2時間程度、杉自身が実際に花を生けるところを拝見する会であり、次々と生けられる花の命は、生の一瞬を閉じこめたように強い光を放ち、そして跡形もなく消え去る。参加するひとは生の会とも言うべき時空に立ち会うことになる。
2013 年 museum as itis にて花会
2014年 志賀直哉旧居、新薬師寺、東大寺二月堂参籠所での花会
2015年 濱田庄司参考館にて花会
2016年 台湾上海にて花会
2017年 東大寺 狂言舞台と花の奉納、北京にて花会
2018年 小田原老欅荘にて花会、韓国 オランダ パリにて花会
2019年 新潮社 工芸青花にて花会
2023年 江之浦測候所にて花会、多摩美術大学にて花会、金沢工芸美術大学特別講義
2024年 東京画廊にて個展、東京、パリにて花会
奈良 東大寺観音院にて花会
中国 anayaにて花会予定
六本木ヒルズアートナイトにて花会予定
写真:奥山晴日