Hisako SEKIJIMA | BASKETRY
2021年7月2日(金) - 7月19日(月)
かごに見える。樹皮が交錯しあい、互いの弾力が空間を支えている。
その隙間を通り抜けた光線は、プリズムのように多様なイメージを分散する。
かごに見える。素材は束ねられ、緻密に組まれて、小さな建築のようだ。
空間は背景を自身の一部にしながら、溶け込むことを許さない。
存在の重量感はその周囲を支配している。
これはなんだ。かご、という素朴な姿に惑わされてはいないか。
これは思考の格闘の痕跡なのだ。
点と線と面の織りなす関係を徹底的に分解しつづけた関島さんの問いは
40年ものあいだ途切れることなく湧き続け、まもなく680に迫ろうとしている。
意識と意識の境界。野生と秩序の融和。既知の未知に深く分け入り
いともエレガントに、いとも美しく
親しみすら感じさせるようなかごの姿に仕立ててしまった作家のスケールに気づいた時
言葉は解放され、光景は一変する。
これはなんだ。
かごという素朴な姿に騙されてはいけない。
これは、圧倒的な喜びの実体なのだ。
3年ぶりに、バスケタリーアートの第一人者である関島寿子さんの展示会を開きます。
素晴らしいエネルギーに満ち溢れた「かご」の喜びを感じてください。
【ギャラリートーク:録画配信】
関島さんの作品を見て、空間や構造に昂るひともいれば、哲学を散歩するひとがいます。
一見、カゴのように見える関島さんの造形は、どこを出発点として何れへ向かっているのか。作り手である関島寿子さんの対談相手に、国立民族学博物館の上羽陽子さんをお迎えして、関島さんの仕事を通じてバスケタリーについて語り合い、テキスタイル研究と現代造形の交差点に注目したいと思います。
上羽陽子[うえばようこ]
国立民族学博物館人類文明誌研究部准教授。専門はテキスタイル研究。特にインドを対象として、つくり手の視点に立って染織技術や布の役割などについて研究。近年は、バスケタリーを通じた植物加工技術と生態資源利用の文化人類学的研究にも手を伸ばしている。著書に『インド・ラバーリー社会の染織と儀礼ーラクダとともに生きる人びと』(昭和堂 2006年)、『インド染織の現場ーつくり手たちに学ぶ』(臨川書店 2015年)、共編に『現代手芸考—ものづくりの意味を問い直す』(フィルムアート社 2020年)などがある。
関島寿子|Hisako SEKIJIMA
1966年津田塾大学英文科卒業。28歳の時に趣味としてラタン編みを始めた。1975年、夫の赴任地であるニューヨークに移る。ニューヨークの美術館やギャラリーを通して、さまざまな異国文化に接し、古来からの編み技法をじっくりと研究する機会を得た。米国の現代編み技法(バスケタリー)の最先端アーティスト(エド・ロスバック、ジョン・マックイーン)との出会いによって、初めてバスケタリーへの目を開かれる。このアーティスト達が、古来の編み技法をマスターしながらも、やがて自らの斬新的な手法を見出して行くのに魅力を感じ、この時から、バスケタリーのみに専念するようになる。多種多様な天然素材との取り組み、奇抜な編み構造を生み出す豊かな着想力、絵画的な想像力、作品の日常性と非日常性。そして魅力的なキャラクター。今日、関島寿子は世界的なバスケタリーの第一人者である。
主な著書
「バスケタリー。バスケットから草の靴までのプロジェクト」1986年
「自然を編む」 創和出版 1986年
「バスケタリーの定式」 住まいの図書館出版局 1988年
photo by Yusuke NISHIBE