SHIMEKAZARI | Japanese New Year Decorations made of Hemp
2020年11月6日(金) - 11月16日(月)
日日のしめ飾りは、日本各地の伝統的なかたちをもとに、縁起物の飾りを一切つけず、大麻独特の輝きと撚りのすがたを縁起としています。稲作が伝播する以前の、縄文時代の遺跡からも発掘される大麻。現在の国産大麻の繊維には薬効はなく、収穫後の茎を発酵させるなどの工程を経て繊維をとります。綯うことで際立つのは、黄金にかがやくような白さです。神道の装束や供物、祓えの道具に、今も昔も変わらず大麻が用いられるのは、清らかさの象徴だからと言われます。
しめ飾りは、神社仏閣の麻製品を手がけている京都の山川家にお願いして、上質な国産大麻で制作されています。明治末期より続く山川家では、現在もすべての作業を手作業で行います。大麻を継ぎ足しながら太さや長さを変え、微妙な手の力加減を絶えず繰り返す縄綯いを見ていると、私たちの奥深いところにある体の記憶が揺さぶられるようです。
「腕に縒りをかける」「縒りを戻す」という言葉が表すように、二本または三本の紐をとり、撚りをかけるとともに、さらに螺旋状にずらしながら綯う動きは、古来から生活に溶け込んだ手の動きでした。そう言われてみれば、紐、カゴ、網、ござなどの身の回りの生活道具は、世界中いたるところで植物の繊維をつかって綯ったり撚ったりすることで作られてきています。
生活道具に用いられる右綯いとは反対に、日本の神事に関わる縄は、左に綯う伝統があります。「イザナギが左から、イザナミが右から御柱を回って出会ったことで初めて国が生まれた」という古事記の記述がヒントかもしれません。しめ飾りも、左に綯うことで神様に捧げる尊いものとしての祈りが込められています。
しめ飾りの「しめ」とは、「神が占める」の意味があります。神社の御神木の磐座によくある、ぐるりと貼られたしめ縄は、神が占有する場所として結界や魔除けを意味するものです。やがて、邪気を払って年神さまをお迎えする、年と年をつなぐものとして、地域や家々でしめ縄を工夫し造形した様々な「しめ飾り」が生まれました。
例年好評の鳩や杓子など掌サイズの小さなものから、雨雷や蛇といった存在感抜群の大きなサイズのしめ飾りまで、今年も7種類をご用意しました。贈り物や年末のご挨拶にもお遣いいただけるよう、ひとつひとつ白箱に収めています。 年神さまに守られ、清々しい気持ちで新しい年をお過ごしになれますように。
参考文献:「しめかざり」森須磨子、「大麻という農作物」大麻博物館、「麁服と繪服」中谷比佐子、「四季の年中行事と習わし」竹中敬明、「右撚り・左撚り-縄文土器の文様と紐の撚り」長井市古代の丘資料館