谷口 吏 うるしの匙

谷口 吏
うるしの匙

Tsutomu TANIGUCHI(1949- 2015) | LACQUERED WOODEN SPOONS

2016年1月3日(日) ー 1月11日(月)

10:00 - 18:00
会期中無休

「今日の漆掻きのほとんどが、夏には山で漆掻きをし、冬には町の工場で出稼ぎをしている。僕は拘束されたくなかったので、自分一人でできる冬の仕事を探した。

匙を作ると決めたのは、大きな器と違って、匙は初めから終わりまでひとりで作れるからだ。匙は大きな機械も要らないし、自分の手で削り出して、自分の手で集めてきた漆を塗るだけでできる。

僕が作っている匙のかたちは、長年、使い手のことを考え、線の美しさを考えて、少しずつ変えたり改良したりしているうちにでできたものだ。そのかたちは頭ではなく、僕の手が覚えている。木地の最後の削り出しに使うかんなは、自分の指先くらいの大きさだ。」

谷口吏 | TSUTOMU TANIGUCHI(1949-2015)
1949年三重県紀勢に生まれ。高校卒業後の五年間は、国鉄職員として働いた。1973年に退職し、石垣島に移って、何年もの間、砂糖黍畑で働いた。1980年、明漆会の澤口滋と出逢い、澤口の励ましで、砂森栄三男の下で漆掻きを習う。以来、夏になると人里離れた山で漆を掻き、冬には匙を作った。谷口の人生は、仕事柄、引っ越しが多かった。晩年は福島県山都町に住んで、夏は漆を掻きながら、その技を若い人たちに教えた。谷口が作る匙のレパートリーは20種類のかたちに及んでいる。どれ程頑張っても、年間約300本以上はつくれない。2015年春に逝去。2016年1月、本展が最後の展示会となった。

主な展覧会
1996-1997年:グループ展「ぬりもの-現代日本の漆芸家」、ミュンスター漆芸博物館、ミュンヘン手工芸館、ハンブルク美術工芸博物館、ベルリン東アジア美術館。

主な収蔵先
ピナコテーク・デア・モデルネ、ディ・ノイエ・ザムルング(ミュンヘン)