シュテファン・フィンク 木の万年筆

シュテファン・フィンク
木の万年筆

Stefan FINK | WRITING UTENSILS

2016年9月30日(金) ー 10月9日(日)

作家在廊 9月30日(金) - 10月2日(日)
10:00 - 18:00
会期中無休

ひとつの木片が万年筆になるまで、7年かかるという。新たに木を伐って使うことはない。エルベ川の埋れ木、黒檀、ローズウッド。膨大なストックが眠る材料庫に先日、やむなく閉じたバイオリン工房から譲り受けた木が加わった。材木商の家に生まれたシュテファンの指先には、おがくずの匂いと感触が鮮明に残る。木工作家から万年筆職人に転身したのは、市販の筆記用具が細すぎて気に入らなかったからだ。

木と金属。全く性格の異なる二つの素材を合わせて、極寒のフィンランドでも、熱帯のアフリカでも使える万年筆をつくる。そのために、木を削っては一年寝かせ、再び削ってはまた寝かせる。湿り気や温度に呼応するように木は膨らみ、ねじれ、縮む。狂いの生じた木片を外していきながら、数年かけてとうとう残ったものだけがシュテファンの仕事相手になる。大手メーカーが参入を諦めた訳がそこにある。

それぞれの木目の見どころを生かして、ペン先の位置が決まる。仕上げのオイルはそのうちに手の脂に馴染み、体の一部のようになる。塗装はしない。完璧主義者のシュテファンが、金具もデザインできるようになったのは、ドイツで多数の賞をとり、知名度が上がってからのこと。現在はすべてのパーツがオリジナルで、ニップ(ペン先)にはFinkのロゴマークである鳥が刻印されている。

シュテファンが手懸ける木の筆記用具には、万年筆、水性ボールペンのほか、デザイナーや建築家が好むデッサンペンがある。今回は、旅や仕事に携帯できるポケット万年筆も登場する。

シュテファン・フィンク|STEFAN FINK
1958年、ハンブルクでチーク材の商売を営む家に生まれる。中学校を修了してから3年間、ヴェルナー・ネーリングの工房に弟子入り。職人として、ハンブルクとミュンヘンのいろいろな木地工房で技術を磨いた。1982年、ハンブルクの美術大学工業デザイン科に入学。1986年、大学卒業を機に、ハンブルクに工房を設立。この年、フィンクは、書斎文化のデザイン・コンテストに出品。木が万年筆 にもってこいの素材であることがわかったのもこの頃であった。以来、木製の手作り万年筆の開発に着手する。

トークベント「手で考える」
9月30日(金) 18:00 – 19:30
参加無料/予約不要
シュテファン・フィンク
マイク・エーブルソン (POSTALCO
木の万年筆を手作りするシュテファン、日本の職人技から日用品を発想するマイク。彼らの形はどのように生まれてくるのか。京都で出会った二人が、物の背後について語り合います。また会期中は、ポスタルコの新しいライン(和紙を使ったノートやケース類)も販売いたします。

マイク・エーブルソン|MIKE ABELSON
ポスタルコの始まりは、NY在住の鞄のデザイナーだったマイクが、妻の友理のために手作りしたA4サイズの書類ケースでした。包む、入れる、整理する、保存する。毎日つかう日用品に丁寧に向き合い、Utility(実用的)、Fun(楽しみ)そしてWarmth(温かみ)に溢れたプロダクトは、職人や工房とともに生産していく独自のスタイルから生まれています。